堂々と浮気する旦那のトラウマに悩んだ日々…前編
「夫に浮気された」「再構築を選んだけれど心が壊れた」「もう限界だった」──これは、実際に夫の裏切りとモラルハラスメントを経験し、3人の子どもを育て上げながら人生を再生させたひとりの女性・恵さんの物語です。
幸せなはずの結婚生活は、突然の浮気発覚で崩壊。望まない妊娠、経済的苦境、そして夫の理不尽な執着。
それでも彼女は、母として、ひとりの女性として、何度も立ち上がりました。
幸せな結婚から始まった

まだ二十歳だった恵さんにとって、久さんとの出会いはまるで夢のようでした。
10歳年上の久さんは、とにかく積極的で、恵さんにたくさんの愛の言葉を投げかけてくれました。
「可愛い」「大好き」「愛してる」「ずっと大事にするよ」。
そんな言葉を毎日のように繰り返す久さんに、恋愛経験のなかった恵さんはたちまち心を奪われました。
そして結婚。若くして夫婦となり、子どもも授かりました。幸せな家庭。これから家族で積み重ねていく日々に、恵さんはたしかな未来を信じていました。
けれど、その穏やかな日々は突然崩れました。
突然の裏切り
久さんが、帰ってこなくなったのです。
最初は「仕事が遅くなったのかな?」と思っていた恵さんでしたが、1日、2日…何日経っても帰宅せず、連絡もつかない。幼い子どもを抱え、不安と恐怖の中でただ待つしかありませんでした。
義理の両親も心配し、何度も職場に連絡を取ってくれました。 職場には出勤しているようでした。ところが、ある日、義母の口から信じられない言葉を聞かされます。
「久は、他の女の人の家にいるみたい。その人が好きなんだって…」
頭が真っ白になりました。思考が止まり、言葉が出てこない。ただ、涙が次から次へと溢れて止まりませんでした。
現実があまりにも突然で、あまりにも酷で。小さな子を抱えて、これからどうして生きていけばいいのか…
義両親の説得、そして再構築
それでも義理の両親が久さんを説得してくれて、彼は家に戻ってきました。
夫婦としてやり直す、そう信じて恵さんは、再び生活を共にすることを選びました。
久さんは毎晩求めてくる人でした。 恵さんが疲れていても、具合が悪くても関係ない。
拒めば機嫌を損ね、無言の圧力で従わせようとする。 自分の都合だけを押し付けてくる久さん。
そんな中で、第二子を授かりました。 「もう一度、家族としてやり直せる」 そう願いながら、恵さんは夫婦生活を続けました。
しかし、久さんには多額の借金があることが発覚。 家計はすでに苦しく、恵さんは外に働きに出ることを決意します。 久さんの紹介で、建設現場の仕事に就きました。
男性ばかりの現場。 最初は怖かったし、何もかもがわからなかった。 でも、ある職人さんが丁寧に仕事を教えてくれて、少しずつ業務にも慣れていきました。
又、夜は飲み屋でのバイトもしました。 体は疲れていたけれど、子どもたちのため、家族のため、何より自分自身が崩れてしまわないように、懸命に働きました。
それでも家計の管理は久さん。 給料はすべて彼に渡していました。
ようやく借金を返し終わり、三人目の子供も授かり念願のマイホームを購入しました。
断ると不機嫌な夫
三人目の出産の後、恵さんの体調は芳しくありませんでした。
出産自体は無事だったものの、産後の体調が悪く、恵さんはそのまま病院で処置を受けることになりました。点滴と医療器具に繋がれながら、ただ耐える時間が続いていました。
そんな病室に、久さんが現れました。
一見、心配して駆けつけてくれたようにも見えたその姿に、恵さんは嬉しくなりました。
だが、そのわずかな期待はすぐに裏切られることになります。
医師が処置の説明をしていたそのとき、久さんが発した最初の言葉は、恵さんにとって一生忘れられないものになりました。
「で、先生……いつから“できます”か?」
医師も一瞬、聞き返すように言葉を詰まらせていました。
恵さんは、ベッドの上でそのやり取りを聞きながら、頭の中が真っ白になりました。
まるで、自分が「女性」としての機能だけを持つ“所有物”にされたような侮辱感と、深い虚しさ。
心が静かに、でも確実に崩れていきました。
夫のハラスメント
夜になると、久さんの要求がまた始まる。 体調が悪くても、寝ていても、育児に疲れていても、そんなことはお構いなし。
望まない妊娠が何度も続いた。
そのたびに、恵さんの心と体はすり減っていった。
そのたびに、自分を責め、罪悪感に押し潰されそうになりながらも、久さんには何度も伝えた。
「もう無理。これ以上は無理。お願いだから避妊して」
それでも久さんは聞く耳を持たなかった。
恵さんの気持ちや体調などお構いなしに、夜になれば当然のように体を求め、断れば機嫌を損ねる。夫婦の“義務”だとでも言いたげな態度。恵さんの意思も感情も、そこにはなかった。
何度目かの訴えのあと、久さんはパイプカットの手術を受けて帰ってきた。
「これで大丈夫だろ。もう文句ないよな?」
望まない妊娠のたびに、泣いて、苦しんで、体を傷つけてきたのは誰だったのか。
久さんは、ただ自分の性欲を通す手段として手術を選んだだけでした。
自分の都合のために決断しただけ。
恵さんは、このとき初めて心の底から悟った。
この人にとって、私は“都合のいい存在”でしかないのだと。
※この物語には実際の団体・個人は関係ありません。