始まりは妻に浮気されたトラウマから…前編
目次
始まりは妻に浮気をされたトラウマから逃れるため…
大切な人に裏切られたとき、心に深い傷が残ります。 浮気をされたトラウマは、簡単には忘れられないものです。
本記事では、聡(さとし)さんと加奈子さん(仮名)の実録エピソードをもとに、周りの人に与える影響や、自分の今後の人生に与える影響が見えてきます。
妻に浮気されていたことがトラウマに
聡(さとし)さんは46歳。成人した子供たちはすでに他県に就職し、妻と二人暮らしをしていた。結婚して20年以上経って尚、聡さんは妻を愛していた。
ある日、妻の携帯を何気なく覗いてしまった。その画面に映し出されたのは、知らない男との親密なやり取り。そして、彼の目に飛び込んできたのは、信じがたい言葉だった。
「旦那が大嫌い。帰ってこなければいいのに。」

その瞬間、全身の血の気が引いた。疑いはあった。けれど、現実として突きつけられたその証拠は、彼の心を深くえぐった。
さらに、妻はその男に金を貢いでいるようだった。問い詰めようにも言葉が出てこない。怒りよりも、絶望だった。虚無感に支配される日々が続いた。
この出来事は聡さんにとって辛く、悲しく、衝撃的で根深いトラウマになった。自分のすべてが否定されたようだった。
トラウマから逃れるため新たな出会い、そして二重生活へ
孤独を埋めるように、聡さんはマッチングアプリを始めた。
そして10歳年上の女性と出会う。彼女は一人で団地に住んでいた。物静かな慎ましい女性だった。落ち着いた雰囲気に、彼は安らぎを覚えた。
「既婚者だけど、いいの?」
問いかけた聡さんに、彼女は静かに微笑んだ。それ以上、何も聞こうとはしなかった。
毎週末、聡さんは「バイト」と偽って彼女の元へ通い、心の傷を癒していた。年上の彼女はいつも食事の準備をして待っていてくれた。夜はいつでも受け入れてくれた。何も求めない女だった。ただ静かに待っていてくれた。
妻は聡さんを疑うことも無く、むしろ無関心なようだった。
年上の彼女との関係は気が付けば10年に及んでいた。しかし、彼は再婚を考えてはいなかった。理由は単純だ。10歳年上の彼女の年齢が嫌だったのだ。
やがて、聡さんは新たな刺激を求め、さらに別の女性を探し始めた。そして出会ったのが、加奈子さんだった。
聡さんにとって、肉体関係は癒しだった。妻とは長年夫婦関係がなく、週に一度会う10歳年上の彼女との関係だけでは満たされなくなっていった。

加奈子さん「私は選ばれた女」
加奈子さんは聡さんよりも3つ年下だった。バツイチで子供は他県に就職していた。派遣の仕事をしながら一人で実家に暮らしていた。年上の彼女とは違い、加奈子さんはよく喋る女だった。
加奈子さんは、聡さんが既婚者であることを知りながら、何のためらいもなく積極的に接近した。
「早く奥さんと別れて、私と結婚して。」
そう繰り返し迫る姿には、一片の遠慮もなかった。
彼女の言葉に、聡さんは曖昧に頷いた。
しかし、その裏で彼は三重生活を送っていた。週末は年上の彼女と過ごし、平日には加奈子さんに会う。
妻は何の疑いも持たず、それどころか聡さんに対して無関心であった。
彼は二人の間を行き来しながら、家庭のことなど考えなくなっていった。
ある日、加奈子さんは聡さんの携帯を盗み見た。
そこには、聡さんが長年付き合っている年上の女性とのやり取りが残っていた。
次の瞬間、加奈子さんは激高した。
「この女、誰よ!」
怒りに駆られた加奈子さんは、年上の彼女の住所を突き止め、直接押しかけていった。
「恥ずかしくないのか!子供がいるくせに!」
「不倫だろうが!」
「あんたなんかタダでヤレるだけの女なの!」
「婆さんじゃない!私の方が若いのよ!」
耐えがたい暴言を、一時間以上浴びせ続けた。年上の彼女は唇を噛み締め、何も言わなかった。最後に加奈子さんは震える彼女の姿を写真に収め、勝ち誇ったように去っていった。
加奈子さんは、この出来事をまるで武勇伝のように語った。
彼女は、10歳年上の女性をあざ笑うかのように様々な人に写真まで公開し、「私の方が選ばれたの」「私は勝った女」と、勝ち誇った。
あたかも相手を傷つけることに快感を覚えたかのような態度で。
その日以来、聡さんは年上の彼女と会うことはなくなった。

「責任を取りなさいよ」
加奈子さんは聡さんを追い詰めた。
「離婚しなさいよ!」
「年上女の写真と住所、ばら撒いてもいいのよ!」
彼女の詰め寄る声が、頭の中で何度も反響する。
聡さんはもともと、女性がいないと駄目な性分で、肉体関係が生きがいの男だった。今、そばにいるのは加奈子さんだけ。これから先、新しい出会いがあるとも思えない。ここまで自分を求めてくれる女性は、加奈子さん以外にはいないのではないか。
「奥さんと別れて、私と結婚してよ!」
彼女の執拗な言葉に追い詰められた聡さんはついに決断する。
妻に離婚を切り出したのだ。
しかし、妻は頑なに拒んだ。
「離婚なんてしない」
専業主婦だった妻にとって、安定した生活を捨てることは恐怖だった。
しかし、聡さんには妻の不貞の証拠があった。最終的に年金の分割と当面の生活費を渡すことで決着がつき、離婚は成立した。
そして、新生活の準備が整わないまま、すぐに加奈子さんがが聡さんの家へ転がり込んできた。
二人は再婚した。
新たな生活、そして崩壊
「この家、片付けるわね」
加奈子さんは家中の整理を始めた。だが、そのやり方はあまりにも乱暴だった。
雨の降る日、彼女は前妻の荷物を玄関に放り出した。
服、本、写真。思い出の品々が雨に打たれ、泥にまみれていく。
「取りに来させて!」
前妻は帰省してきた子供と共にやってきた。
「……荷物、持って帰るわね」
静かに言う前妻に、加奈子さんは勝ち誇ったように腕を組みその表情は高揚しているように見えた。
加奈子さんは、ことあるごとに聡さんの前妻をバカにした。
「元嫁は今、掃除婦やって細々暮らしてるんだって〜。私はスーツ仕事する人種しか知らないけど?」
「私が嫁いだ時、家中すっごく汚かったの!全部私がきれいにしたのよ~」
「子育てもろくにしないで男遊びしてたんだよ~、同じ母親として許せないわ」
聡さんを見る子供の目は冷やかだった。
聡さんは視線を逸らすことしかできなかった。

※登場人物はすべて仮名です。実在の人物や団体などとは関係ありません。